●20世紀のファッションは、それまでと比較にならないほど目まぐるしく変化しました。
女性への眼差しや求められるイメージ、あるいはその立場や役割が大きく変わっていったからだと思います。
●まず、19世紀の中頃から末にかけてのファッションからお話を始めました。この時代は、イギリスのヴィクトリアン時代にあたります。
女性は、「か弱く」「憂鬱に悩み」「従順」という男性が理想とする姿が求められていました。ウエストの細さはとても大切でした。19世紀末になると、女性のシルエットはS字を描きます。
胸を張りだして、ヒップを後ろに突き出して・・もちろんウエストは細く細く!女性のファッション史の中で一番ウエストが締め付けられていたのがこの時代です。
●でも、同じこの時代に「女性解放運動」も起こってます。
1851年にアメリア・ジェンクス・ブルマー(1818-94)がトルコ風ズボンを股下丈のスカートと組み合わせたスタイルを発表しました。
1880年から90年にかけて、このブルマースタイルは、女性が自転車に乗るときに採用され広まります。
女性は少しづつですが、新しい時代を生きようとしていきます。
●20世紀にはいって、ヨーロッパではジャポニスムという日本ブームで沸き上がります。
キモノが部屋のくつろぎ着として用いられるようになり、衣服は「胴で着る」タイプから「肩で着る」タイプに移行します。
この時、ファッションを牽引したのはポール・ポワレ(1879-1944)です。
●20世紀のモードは、1920年代、1930年代、1940年代・・・・というように10年でくくられてその特徴が語られます。
あんなに身体を締め付けて変形させていたファッションは衰退して1920年代には体から凹凸が消えます
。ウエストも下の方になり、バストもヒップもぺったんこ。長方形のような体が理想になります
。衣服がシンプルになってその反動のようにお化粧が濃くなります。
●20世紀の社会を大きく変えたのは、二つの世界大戦でしょう。
女性は男性の代わりに働くようになって社会に進出します。
長いスカートは短くなり、薄いシルクは男性のスーツのテキスタイルに代わります。
その後も女性の社会進出は止まりません。
1930年代には、動きやすい昼間の服としなやかな夜の服の二つを着分けるようになりました。
●1945年に第二次世界大戦が終わり、1947年にディオールが「ニュールック」を発表します。
上等なシルクをたっぷりと使ったファッションは、戦争が終わったことの喜びを伝えました。
●技術革新もファッションに大きな影響を与え続けています。
19世紀中頃にはイギリスの産業革命による鉄などの金属の大量生産が、下着に鉄の付属を付け、ミシンを発明させ、鉄道による旅行服を生み、
大型ショッピングセンターであるデパートを作りました。
1950年代から60年代にかけてナイロン、ポリエステルなどの人口繊維が生産されるようになると、
同時代の宇宙開発競争に呼応するように「コスモ・コール・ルック(宇宙服)」が流行します。
●1970年代はエスニック(民族調)がファッションに取り入れられました。
60年代の後半に流行したヒッピー・スタイルなどの若者文化が影響していると考えられます。
1970年にはパリで高田健三が「ジャングル・ジャップ」というブティックを開き、
日本的なアイデアを盛り込んだファッションを同世代の女性たちのために作り、大きな反響をえました。
●1979年に、マーガレット・サッチャーがイギリス初の女性首相となりました。
80年代は働く女性が注目される時代でした。
1980年制作「9to5」、1988年「ワーキング・ガール」は、働く女性を主人公にした映画です。
●また1980年代は川久保玲や山本耀司が、それまでのヨーロッパでは考えられないようなファッションで世界から注目されます。
このお話は、次回の「日本のファッション史」の回で詳しくお話したいと思います。
もう少々お待ちください。
新型コロナウィルス感染拡大を懸念して、しばらく講座を開催しないことに致しました。
たいへんご迷惑をおかけいたします。